2011年04月30日

乾癬の新しい治療

先日の沖縄皮膚科勉強会は、自治医科大の大槻教授による、最新の乾癬治療についての講演でした。

「乾癬」とは
普通皮膚のターンオーバーは1カ月ほどで、新しい皮膚に入れ替わるが、乾癬患者では、これが3~4日で起こり、白いふけのような皮膚の一部が厚く付着して粉をふくようになります。炎症がおこり皮膚が赤くなります。関節炎を伴う関節症性乾癬などがあります。強いかゆみや関節症状が出る人もいて、患者さんの生活の質(QOL)を低める治療の難しい病気です。
 欧米諸国にもともと多かった疾患で、戦後日本も乾癬患者が増えてきています。欧米型の食生活、カロリーの高い食生活は乾癬を悪化させるといわれています

 軽症な方は、外用療法(ぬりぐすり)、かゆみ止めなどの内服が中心で、中等症から重症な方は、紫外線を照射するナローバンドUVB療法などの光線治療、免疫抑制剤の内服などと外用療法を併用します。
 いろいろな治療の選択肢は増えてきていますが、これらの治療で十分な効果がない、重症な乾癬の新しい治療として、
生物学的製剤(生物が作り出すタンパク質を利用した薬)が使われています。今までどんな治療でも改善しなかった、関節のつらい症状が劇的に改善したなど、注目を浴びています。
 しかし、重篤な感染症などの副作用の報告もあるため、生物学的製剤による乾癬治療を行える施設は限られていて、
 現在のところ、沖縄では、琉大病院皮膚科だけです。
 
 ステロイド内服や注射も自己免疫を抑え、リウマチなどの膠原病や、様々な難治な症状を劇的に改善させる薬ですが、注意すべき副作用があります。そこで、より副作用が少なく効果も強い治療薬が次々開発されていますが、どんな夢のような薬にもやはり気をつけるべき副作用があるのだ、と改めて感じました。新しい治療を実践し、未知の副作用と戦いながら、副作用を未然に防ぐ安全な治療ガイドラインを作る作業をされている最前線の現場の先生のお話は、気の遠くなるような世界ですが、未来の多くの患者さんの命を救い、QOLを高めることにつながる重要な仕事をされているだけあって、エネルギーに満ち溢れ、あっという間の2時間でした。
 
 当クリニックでは、ナローバンドUVB療法と、ビタミンD3外用薬+ステロイド外用薬の併用療法を主に行っています。
 乾癬の治療は、どんどん進歩してきています。
 上のような症状があり、「乾癬かも」と悩んでいる方、昔乾癬と診断され、治らないとあきらめている方がいたら、ぜひ皮膚科受診をおすすめします。
 


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Posted by mami-clinic at 18:35│Comments(0)皮フ科
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